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SAP過去問 (SAP Exam)

【SAP MIGO】取消手順を10ステップで|トラブル解決/徹底解説

SAP MIGOの概要と基本概念

SAP ERPシステム上で在庫管理を行ううえで、MIGOトランザクションは非常に重要な機能を担う。MIGOは「Material Document List」や「Goods Movement」の参照・登録・取消を一元的に行うことができ、さまざまな在庫移動や入出庫処理を行う際の中心的な役割を果たす。言い換えれば、以下のような場面で利用される中核トランザクションといえる。

  • 購買発注(PO)に対する入荷(Goods Receipt
  • 生産オーダーや発注に対する出庫(Goods Issue
  • 返却処理やキャンセル(Cancellation)
  • ストックトランスファ(在庫移動)
  • その他、在庫関連の修正

MIGO以前に主に使われていたMB01・MB31・MB1A・MB1BなどのトランザクションがMIGOに統合され、一つの画面から多彩な操作が可能になったのも大きな特徴のひとつである。
取消処理に着目すると、MIGO画面から該当のマテリアルドキュメントを呼び出し、指定された移動タイプを設定してキャンセルを行う流れが一般的だ。取消時の特徴として、元の品目移動を打ち消す“逆仕訳”の役割を担うことになるため、適切な移動タイプや参照ドキュメントの指定は極めて重要になる。


取消処理の主要ポイント

MIGOでの取消(Cancellation)は、誤って入荷や出荷をしてしまったときや在庫数の訂正が必要なときに実施する。取消手順を理解する際には以下のポイントを意識することが求められる。

  1. 取消と参照ドキュメントの対応
    どのドキュメント(マテリアルドキュメント、購買発注、ロット管理番号など)をもとに取消を行うかで、必要な情報や操作手順が変わる。
  2. 移動タイプの選択
    取消時には通常、元の移動タイプに対して「10X」で表される逆仕訳用の移動タイプを用いることが多い(例:101の逆仕訳は102)。
  3. 在庫のステータス変化
    取消を行うと在庫数だけでなく在庫のステータス(品質検査中、フリー在庫、ブロック在庫など)も変化するケースがあるため、どのステータスが変更になるのかを慎重に確認する必要がある。
  4. 会計伝票への影響
    証憑を取り消す場合、会計上の仕訳や在庫評価額への影響が発生する。会計伝票の自動生成/取消の動きも把握しておく。
  5. SAP標準ロジックとBAdI/ユーザEXIT
    特殊な取消処理が必要な場合、標準ロジックに加えてBAdIやユーザEXITで拡張している組織もある。その場合は追加ロジックの動作も確認する。

代表的な取消用の移動タイプ

SAPでは、品目移動を表すために「移動タイプ(Movement Type)」が設定されており、取消用の移動タイプは基本的に“元の移動タイプ + 1”で定義されるケースが多い。以下に代表的な例を挙げる。

元の移動タイプ説明取消用移動タイプ取消処理の説明
101購買発注からの入荷102発注入荷の取り消し
103購買発注からの入荷(品質)104品質検査在庫として受け入れたものの取り消し
105品質検査在庫→フリー在庫106105の逆仕訳(検査合格に伴う移動を取り消し)
261生産オーダー出庫262生産オーダー出庫の取り消し
301プラント間移動(一段階)302一段階移動の取り消し
651デモ・サンプル出荷652デモ・サンプル出荷の取り消し

これらの移動タイプは標準設定であり、各企業や業務要件に合わせてカスタマイズされることもある。実際に取消を行う際は、組織で定義された独自の移動タイプを使うケースにも注意が必要だ。SAP公式ドキュメント「SAP Help Portal: Goods Movements (MIGO)」には、標準移動タイプの一覧と意味合いが詳しく記載されているので参照するとよい。


MIGOでの取消手順10ステップ

ここからは、MIGOを用いた取消操作の標準的な流れを10ステップに分けて解説する。必要に応じて追加情報や組織独自の運用ルールがあれば組み込んでほしい。

ステップ1:MIGO画面を起動

  1. SAP Easy Access画面から、トランザクションコード「MIGO」を入力してMIGO画面を表示する。
  2. 画面上部の「表示(Display)」「出荷(Goods Issue)」「入荷(Goods Receipt)」などのドロップダウンリストを確認し、「取消(Cancellation)」を選択して開始する。

ステップ2:参照先ドキュメントの指定

  1. 「表示:マテリアルドキュメント」などが選択可能な状態になっているはずなので、取り消したい品目移動のドキュメント番号を入力する。
  2. もしドキュメント番号がわからない場合は、F4検索や「一覧表示」で該当のマテリアルドキュメントを検索し、日付やユーザ名、品目などの条件から絞り込む。

ステップ3:コピーでデータを取り込む

  1. ドキュメント番号を入力したら、「Enter」または「コピー」ボタンなどを押してデータを読み込む。
  2. 読み込まれた明細行が正しく取り消したい品目、数量、ロットなどを含んでいるかを確認する。

ステップ4:移動タイプのチェック

  1. 読み込まれた画面では通常、元の移動タイプに対する取消移動タイプ(例:101→102)が自動でセットされる。
  2. 必要に応じて移動タイプの欄を再度確認し、想定と異なる場合は正しい取消移動タイプを選択する。

ステップ5:数量・在庫区分の確認

  1. 取り消したい数量が正しいか確認する。数量が一部のみの場合は、必要数量を入力して部分的に取消を行う。
  2. 在庫区分(フリー在庫や品質検査在庫など)やバッチ(ロット)番号の入力も間違いがないかをチェックする。

ステップ6:勘定設定・会計関連データの確認

  1. 会計伝票を伴う場合は、明細行を展開すると“勘定設定”などのタブが表示される。ここでGLアカウントへの仕訳が正しいかを確認する。
  2. レポート上の管理目的で特定の原価センタや受注への帰属設定が必要な場合、明細タブでの入力も適切か再チェックする。

ステップ7:参照ドキュメントとの整合性チェック

  1. 元の購買発注(PO)番号などが表示されている場合は、該当のPOが正しいか再度確認する。
  2. 生産オーダー出庫の場合は、生産オーダー番号があっているか、すでにクローズ済みのオーダーではないかを注意深く確認する。

ステップ8:シミュレーションで伝票の事前確認

  1. 上部のツールバーまたはメニューから「伝票シミュレーション」を実行できる。ここで会計仕訳がどのように起票されるかを事前にチェックする。
  2. シミュレーションが問題なければ、「伝票を発行(POST)」の準備が整ったと判断できる。

ステップ9:取消伝票の作成(POST)

  1. 画面上部の「POST(保存)」または「記帳」ボタンをクリックして、取り消し伝票を作成する。
  2. システムメッセージがエラーを出さずに、正常終了メッセージ(例:Material document 5xxxxxxxx2 posted)が表示されれば、取消が完了したことになる。

ステップ10:結果の確認

  1. MIGOやMB03などで新しいマテリアルドキュメントが作成されていることを確認する。
  2. 会計伝票(FIドキュメント)も必要に応じてFB03などから確認し、内容に相違がないかチェックする。
  3. 在庫数量や会計残高が正しく取り消し前の状態または想定通りの状態に戻っているかを最終確認する。

取消処理でよくあるトラブルと対処法

取消処理にまつわるトラブルは少なくない。SAP CommunityやSAP Pressの著作「Materials Management with SAP ERP」でも、以下のような事例が頻繁に取り上げられている。

1. ドキュメントがロックされていて取消不可

  • 原因例: 別ユーザが同じドキュメントや品目を編集中、または自動バッチジョブが同ドキュメントにアクセス中。
  • 対処: SM12などでロックエントリを確認し、該当のユーザに終了またはログアウトを依頼するか、ジョブ完了後に再度実行する。

2. 在庫がすでに消費されている

  • 原因例: 受入直後に生産オーダー出庫や他の出庫が行われ、在庫が0になっている、もしくはロットが異なる。
  • 対処: 部分的な数量での取り消しに切り替える、あるいは追加の在庫調整(Physical Inventory)を行うことを検討する。

3. 既に別の取消伝票が存在し二重取消になる

  • 原因例: 重複操作により、同じドキュメントに対して二度取消を行おうとしている。
  • 対処: マテリアルドキュメント一覧(MB51など)で過去の取消記録を探し、既に取消が実行済みかを確認する。

4. 会計伝票側のエラー

  • 原因例: 会計期間がクローズされている、または勘定設定が不適合。
  • 対処: OB52で会計期間を確認し、該当する期間がオープンかどうかをチェック。勘定設定エラーならOKB9などの設定を見直す。

5. カスタマイズされた移動タイプでの不整合

  • 原因例: 独自に作成した取消用の移動タイプが標準連動していない、関連するBAdIの処理が誤作動。
  • 対処: IMG(SPRO)で移動タイプの設定を見直し、BAdIやユーザEXITのコーディングを確認する。

取消後の在庫ステータス変化と注意点

取消を行うと、以下のように在庫のステータスが変化する。単に数量が戻るだけでなく、どのステータス在庫が増減するかを正確に理解しておく必要がある。

  1. フリー在庫 (Unrestricted Stock)
    元の移動タイプが101で入荷したものを102で取り消す場合、フリー在庫が減少し、会計的に入荷時の仕訳を取り消す形になる。
  2. 品質検査在庫 (Quality Inspection Stock)
    103入荷やQMが絡むケースでは、104による取り消しが発生する。検査ステータスを変更しているかどうかを常にチェック。
  3. ブロック在庫 (Blocked Stock)
    ブロック在庫として受け入れた場合、取り消しも対応するブロック在庫移動タイプを利用する。

また、在庫処理と同時に会計的なステータス変化(在庫評価額の増減や仕訳の取り消し)も行われるので、FI文書(会計伝票)の状態も合わせて監視しておく必要がある。


複数明細行や一括取り消しのポイント

MIGO画面では複数の明細行を一度に取り込み、まとめて取消を行うことも可能だ。しかし、以下の点に注意が必要である。

  1. 同一ドキュメント番号でも明細が異なる場合
    明細ごとに品目やバッチが違う場合、全明細を取消したくないケースもある。誤って一括取り消しすると不要な取り消しが発生する恐れがあるので、チェックボックスや数量欄を慎重に確認する。
  2. 多段階移動(2-Step Transfer)の途中段階
    プラント間移動を2段階で行っている場合、1段階目の移動がキャンセルできるか、2段階目の移動が既に完了しているかで処理フローが変化する。
  3. 在庫更新日と会計伝票日
    複数明細を一括でPOSTすると伝票日が同じになるが、実際の入出庫日付が異なる場合は整合性が崩れる場合がある。必要ならば明細ごとに日付を分ける調整を行う。

取消の監査ログとトレーサビリティ

会計監査や社内監査の観点で、取消処理の履歴管理は特に重要視される。SAPシステムでは以下の方法で監査ログを確認できる。

  • MB51(Material Document List)
    マテリアルドキュメントベースでいつ、だれが、どのような移動を行ったか一覧表示が可能。取消伝票も同様に表示される。
  • MB03(Display Material Document)
    個別のマテリアルドキュメント明細を参照し、伝票ヘッダの作成者や作成日時を確認できる。
  • SAP Audit Log(Security Audit Log)
    システム監査ログの機能。ユーザごとの操作履歴を追跡する際に活用することがある。
  • 会計伝票(FB03)
    会計の視点から、どの勘定科目に仕訳が行われたかを確認。取消した伝票にも対応する会計ドキュメントが割り当てられる。

監査やコンプライアンスが厳格な業界では、MIGOでの取消を行う際にも承認ワークフローや監査ログの保管ルールを確立しているケースが多い。SAP公式トレーニングでも、コンプライアンス面から操作権限を適切に割り当てるよう注意喚起がされている。


取消時に考慮すべき権限・ロール

MIGOトランザクションを操作するには、SAPのロール・権限設定で以下のようなオブジェクトが関わる。

  1. MIGOに関連するトランザクションコード権限
    例:M_MSEG_BWA(品目明細)、M_MSEG_WMB(会計明細)などを適切に割り当てる。
  2. 会計伝票を閲覧・作成する権限
    FIモジュールに関連する権限が不十分だと、MIGOから会計伝票をPOSTする際にエラーが発生する可能性がある。
  3. 品目マスタを更新・参照する権限
    品目グループやプラントごとのアクセス制限が厳しい環境では、権限オブジェクトを詳細に設定している場合がある。

誤った取消が行われないように、承認フローやロール管理のルールをしっかりと作り込むことが推奨される。SAP Insiderの記事でも、「取消権限を限定することが在庫精度および会計上の正確性の確保に直結する」と述べられている。


高度な運用:自動化とBAPI/ユーザEXIT

大量のドキュメントを一括で取消しなければならない場合、手動操作だけでは大きな工数を要する。そこで、以下のような拡張手段が検討される。

  • BAPIを使った一括取消
    BAPI_GOODSMVT_CREATE などを利用し、一括で取消データを投入できる。大量データや日次バッチなどでの処理に向いている。
  • ユーザEXIT/BAdIの実装
    取消時に追加チェックを挟むための拡張。たとえば、関連する品質情報やシリアル番号が一致しているかを強制的にチェックするなど、標準ロジックにない制御を加えられる。
  • Workflow連携
    取消操作に承認プロセスを組み込み、誤操作を最小限に抑える。

Hasso Plattner(SAP共同創業者)は、「SAPシステムの柔軟性は標準トランザクションと拡張機能の両輪で成り立つ」と述べており、実運用では標準と拡張の組み合わせが極めて重要となる。


参考資料と関連リンク

  1. SAP Help Portal: Goods Movements (MIGO)
    • MIGOを中心とした標準的なプロセスや移動タイプのリストが掲載されている。
  2. SAP Press: Materials Management with SAP ERP
    • 入出庫や在庫管理の実践的な情報が充実しており、取消時のベストプラクティスなども解説されている。
  3. SAP Community: MIGO Cancellation Best Practices
    • 実務で頻発するトラブルシュートや他社事例などのディスカッションが参照できる。
  4. Michael Management: SAP MM (Materials Management) Online Training
    • MIGOの操作手順動画や学習コースがあり、視覚的に学びたい場合に役立つ。

まとめと運用上のチェックポイント

MIGOで取消を行う際は、単に「誤りを修正する処理」という認識だけではなく、在庫・会計・監査面の影響を総合的に踏まえて手順を進めることが肝要である。特に以下のポイントに注目してほしい。

  • 参照ドキュメントの明確化
    ドキュメント番号を正しく把握し、取消対象の品目や数量を間違えないようにする。
  • 移動タイプ選択とステータス管理
    取消移動タイプが正しいか、在庫ステータスがどのように変化するかを確認する。
  • 会計伝票への反映
    間違った勘定科目やコストセンタに仕訳が起きないよう、事前にシミュレーションを活用する。
  • 権限管理と監査対応
    取消権限が一部の担当者に限定されているか、変更履歴が監査可能な状態になっているか。
  • 自動化と拡張機能の活用
    大量処理や特殊要件に対しては、BAPIやユーザEXIT、Workflow連携を検討する。

SAP公式ドキュメントや専門家による文献にも「取消手順を正しく設計することは在庫および会計の正確性を高め、データの信頼性を高める」という趣旨のコメントが多く見られる。エラー対応のコストを減らすうえでも、正確かつ効率的な取消運用を整備する価値は大きい。

以上が、SAP MIGOにおける取消手順と基本情報に関する徹底解説となる。誤操作や不整合を防ぎつつ、在庫精度を保持・改善していくためにも、各組織での運用ルールとSAP標準機能を的確に組み合わせ、継続的に最適化していくことを推奨する。

 

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